お知らせ

こころをもった経営者、こころを武器に・・・、と生徒から言われた私。

今、生徒の一人が私に言った。
先生はこころをもった経営者。こころを武器に・・・。
お腹を抱えて大笑いしてしまった!

私たちの最大使命は、合格に導くこと。
合格から遠ざかるような要素は、教科だけではなく、それ以外の姿勢の面などからも、徹底的になくすよう努める。
ケアレスミスなどをする原因も徹底的に突き止めるし、姿勢の面で、これは合格できるかどうかわからない・・・、と思った場合は、今頃ならきっと注意するだろう。

元生活指導部の私。
こんなこと、塾の講師になってまでしてるなんて・・・。
とつぶやいたら、
ある生徒が、
でも、それは先生の仕事だから・・・。
と言うので、
こんなこと誰がするのよ・・・。およそ経営者じゃないね・・・。
と答えたら、

先生はこころをもった経営者、こころを武器に・・・。

と言われたのである。

それこそ私がしたかったことなのではあるが、そうなのであるが、しかし・・・。

ときに人を叱るということは疲れる。
非常に悩む。
叱られるより、ずっとエネルギーがいる。
私などの年齢になると、叱られることなどだんだん多くはなくなってきたが、若いから、未熟だから、と言って、叱られてばかりの頃が懐かしい。

若干22歳で生活指導部に配属され、若いお姉さんの言うことなど聞く気もない(と思われる?)生徒に指導し出して早○○年。
その間に子供を産み、考え方も変わり、持って行き方もうまくはなったと言いながら、それでも時折、生徒を叱りつけなければならなくなって、相当に悩む。
では叱らなければいいではないか・・・?
と思うけれど、そしたら、それは合格から遠ざかることにつながる。

経験上、基本的に自分のしたことは自分に返ってくる。
それならまだいい。
自分のしたことは良いことも悪いことも、自分にとって一番大事な人に起こってくる。

だから、子育ても気を抜けない。
いや、子育てほど気が抜けない仕事はない。
一瞬一瞬、その子の気持ちを聴き、意志を尊重し、でも、違うものは違うと言い続けなければならない。
もう一度やれ!と言われたら、もう、気が遠くなって、勘弁してほしい・・・、と思うだろう。

自分自身も気が抜けない。
人にしたことは返ってくる。
だから、私の場合、専門家を尊ぶことに神経を遣う。
自分が教育が大事だから、ほかの専門家にも気を遣う。
それだけ教育の世界で神経を張り詰めて生きてきたとも言える。

間違ったことをさせたくない。
私の前で、見たことは、見えたことは、私がある程度何とかしなければならない。

昔、あるとき、文化祭のための全体集会の折、自分が副担任をしていたクラスの生徒と、その隣のクラスの生徒が、口論していた。
後ろから見ると、大きな声ではないので聞こえないけれど、言い合いをしていた。
意外な生徒だった。
人当たりもいいし、穏やかな人懐こい子たちだった。
担任の先生にその様子を告げたかったが、私は逃げた。
なぜなら、担任の先生とうまく行っていなかったのである。
副担任だから見えることも、生徒が気を許して見せる姿もある。
でも、私が報告することをうるさがっておられることは明白だったので、何度も何度も言っていたけれど、ついには屈して、自分が楽な方を選んでしまった。文化祭だし、楽しい雰囲気を壊したくないし、こんな時だし・・・。
その晩に事件は起こった。
一人は謹慎処分の後、学校にいなくなり、一人は人間不信の様相で、その後卒業までの時間を過ごしているようだった。

いつまでも気になっていた。
あの時、嫌でも報告しておくべきだった。そしたら、二人の人生も暗くならずに済んだ部分があるだろう。
弱いよな、私、と思った。

ずっと思っていたけれど、2人目の子どもの出産の折に里帰り出産で、産婦人科に検診に行った折、学校に残った生徒と会った。
懐かしくて話していたら、何と結婚して、赤ちゃんができたかもしれなくて、奥さんが診てもらいに来ていたのだった。

ちゃんと旦那さんして、奥さんのためにお母さまと一緒に来るようになったんだな。
と嬉しかった。

赤ちゃんがいたそうで、嬉しそうに言ってくれた。

少なくとも、夫に対してと、子どもたちに対しては、その瞬間瞬間を逃さないように努力していた。
できることは全部やってみたと思う。
教えられたことは全部。

でも、人が相手なので、それが成功だったのかどうかわからない。
教育も人が相手なので、それが良かったのかどうかはわからない。

でも、ただ言える。
若かろうとそうでなかろうと、まだ娘時代であろうと、母親になってからであろうと、一生懸命だったということ。

それでも、今でも、生活指導的に生徒さんにあれこれ言わなければならない時、あああ、と思ってしまう私がいる。
たぶん、一生、こんな風に悩み続けるだろうし、子育てが終わろうが、どんな仕事をしようが、日々判断することの連続で、きっとこれでいい、などと言うときは絶対に来なくて、一生精進を続けることになるだろう。

そういえば今度の日曜日は、「哲学カフェ」では、カントのお話。
教育の世界でも大変にご活躍されたカント。
教育とも相当に絡むお話なので、先生や周りの皆様にいろいろ教えていただこうと思っている。

公開:2022/11/18 最終更新:2022/11/18